2011/11/10

木下長宏さんレクチャー



今月7日と8日の二日間に渡り、美術史学者の木下長宏さんによるレクチャーが行われました。




木下さんは幅広い美術史学者として著名な方ですが、今回のレクチャーでは主に日本近代の美術に焦点をあててお話をしてくださいました。

1日目は、


『日本近代の絵画 ―「日本」と「西洋」(伝統と近代)の相克』


というタイトルでレクチャーが行われました。


(左:木下さん)

レクチャーではスライドを用いて沢山の作品を見ながら、とても興味深い内容を大変分かり易くお話ししていただきました。




今回のレクチャーで最も重要なキーワードとして“相克”という言葉があります。

【相克】:相いれない二つのものが、互いに勝とうとして争うこと。また、その争い。

日本が近代化していく中、押し寄せる「西洋化」の波に当時の画家達はどのように翻弄されていったのでしょうか。
「日本画」「洋画」という概念が生まれた背景や、美術学校が設立された背景、日本特有の“美術公募団体”の設立背景等を、当時の人達が抱えていた“相克”を通して考えていきました。




レクチャー2日目は、

『日本近代の絵画 ―戦争と絵画―』

というタイトルでお話していただきました。




日本近代を考える上で“戦争”はとても大きな問題です。

近代の日本美術史の上でも戦争というキーワードは頻繁に目にします。

香月康男のように実際に戦地に出兵した画家や藤田嗣治のように従軍画家として活躍した画家等、当時は画家達も「西洋化」という波以外にも「戦争」という波に大きく翻弄されていました。




スライドではあまり目にする事の出来ない戦争画が多く、大変貴重な経験となりました。

意外な画家達が戦争画を描いていたことを知り、私自身も驚きました。







「戦争画」というと、その言葉の重さから一定の印象しか持つ事はありませんでしたが、
一言に戦争画といってもその中には様々なものが存在し、当時の画家達の“相克”を垣間みる事が出来ました。




今回の講義は学生たちには大変実りのあるものになったのではないでしょうか。

木下さん、ご多忙中にも関わらず有意義なご講演を賜りました事、まことにありがたく心よりお礼申し上げます。

本当に有り難うございました。